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JOURNAL

農園ジャーナル

マヤ文明の遺産:マヤン レッドの再発見
ホンジュラスの青空の下、静かな高地に立つカカオの木々が、太陽の光を受けて輝いている。その中でひときわ目を引くのが、「マヤン レッド」と呼ばれる特別なトリニタリオ種カカオだ。このカカオは鮮烈な赤色のカカオポッドを実らせ、マヤの人々によって大切に育てられ、今もその文化の遺産として息づいている。

2006年、運命的な出会いがこのカカオを再び世に引き出した。コパン地域の小さな農園で、かつて絶滅寸前だったマヤンレッドが再発見されたのだ。農家たちはそのカカオの木々と共に、祖先の知恵と大地の力を感じながら、日々の生活を送っている。この地域は、古代の遺跡が点在し、マヤ文明の中心地として栄華を誇った場所だ。今では、600人以上の農家がその土地に根を下ろし、カカオだけでなく、コーヒーやトウモロコシ、プランテン(調理用の甘くないバナナ)などを育てながら自然と共存している。

彼らは、木々が成長する最初の1年半、細心の注意を払って世話をする。カビや昆虫といった自然の生物多様性を守りつつ、枯れ葉を木の根元に残して湿度を保つ工夫を施す。農薬や肥料を使わず、地元の知恵を駆使して育てる姿は、まるで自然との対話そのものだ。年に2回の剪定では、枝が空に向かってではなく斜めに伸びるように剪定する。そうすると、太陽の光が木の中心部まで差し込み、さやができる。彼らの手によって、カカオの木は静かに、しかし確実に成長していく。

やがて収穫の季節が訪れると、農家たちは喜びと期待に胸を膨らませる。収集ポイントで豆と果肉が集められ、サン・ペドロ・スーラ(ホンジュラスの主要な都市の一つ)にある発酵ステーションに運ばれる。そこで彼らの手によって、丁寧に処理され、カカオ豆は5日間の発酵、そして約1週間の乾燥を経て香り高いチョコレートの原料へと変貌を遂げる。

その後、マヤン レッドのカカオ豆から作られるチョコレートは、濃厚でフルーティな香りを放ち、ヘーゼルナッツやブドウ、プルーン、ブラックチェリー、柑橘類のわずかな酸味、さらにはキャラメルやコーヒーの香りが重なり合い、贅沢な味わいを生み出す。

ブノワ・ニアンは、600人以上の農家と手を携え、彼らが貧困のサイクルから脱却できるよう支援している。マヤン レッドの生産がピークに達した際には、適正な価格で取引を行っている。このフェアプライスの取り組みは、農家たちの未来に希望の光を灯し、次世代へと続く夢を育んでいるのだ。
真っ赤なカカオポッド
発酵後、均一に乾燥するように定期的に手で回転させる。
CACAO
BENOIT NIHANT 評価
HONDURAS MAYAN RED
ホンジュラス マヤン レッド 73%
マヤ遺跡に近い畑で栽培している真っ赤なカカオポットが特徴的なカカオ豆〈マヤン レッド〉を使用。ヘーゼルナッツ、レーズン、キャラメル、コーヒーの香りが感じられます。
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