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JOURNAL

農園ジャーナル

エクアドルのカカオの聖地:ハシエンダ ビクトリア
エクアドルの秘境、ハシエンダ ビクトリアは、森の奥深くにひっそりと佇んでいる。ここは、トラック一台がようやく通れるような未舗装の道を辿らなければたどり着けない、特別な場所だ。家族経営のこの農園には、数百年もの長い時を生きたセイバの木が立ち並び、その壮大な木陰でカカオの木々が育まれている。マヤの世界では「聖の木」とも呼ばれるこの木々は、農園の自然環境を豊かに保っている。

この土地で栽培されるのは、エクアドルの誇るナシオナル アリバ種。かつて世界最大のカカオ豆輸出国であったエクアドルは、20世紀初頭にはその座を西アフリカに奪われたが、2002年からは一部の生産者たちがこの貴重な原種を復活させるべく立ち上がった。1ヘクタールあたりの収穫量は少ないが、他に類を見ない際立ったアロマがこのカカオの魅力である。

2009年、カルロス・エドゥアルド・ガルシア・フエンテスの指導の下、ナシオナル アリバ種に特化した新しい農園が誕生した。その後、友人アンドレス・グスマンの手によって、持続可能な社会的・環境的プロジェクトが展開され、93名のフルタイムの雇用が生まれた。農園で働く人々の医療支援や食事も確保されている。

そして、カカオの魅力はここに留まらない。ハシエンダ ビクトリアでは、独自の自然発酵技術が施されている。発酵はカカオ豆に命を吹き込み、チョコレートの香りを形成する重要なプロセスである。ここでは、アンドレスと専門家たちが開発した巧妙な技術により、円筒形の木製のタンクで発酵が行われ、豆はバナナの葉に覆われ、手作業で1日2回撹拌される。この手間暇をかけた作業により、豆は均質に発酵し、洗練された味わいを実現する。

ハシエンダ ビクトリアのカカオは、フレッシュフルーツのような香りと、甘さの中にほんのりとスパイシーさを感じさせる。口にするたびに、自然の恵みを味わい、心が満たされる。この地のカカオ豆は、ただの農産物ではなく、家族の歴史と地域の文化が詰まった特別な存在である。

訪れる者は、ハシエンダ ビクトリアの美しい風景と共に、カカオ栽培の背後にある情熱と努力を感じることができるだろう。ここには、自然と共生しながら生きる人々の姿があり、まるで時が止まったかのような穏やかな空気が広がっている。
発酵にかかせない木製タンク
ブノワ・ニアンとアンドレアスらスタッフ
CACAO
BENOIT NIHANT 評価
HACIENDA VICTORIA
ハシエンダ ビクトリア 73%
フレッシュフルーツのような独特の風味、甘さの中にほのかにスパイシーな味わいが感じられるチョコレートです。
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